人生100年時代は現実。
「ライフプラン」つまり人生設計を考えるとき、これが分かっていたら計画しやすいのにな。といつも思うことがあります。
それは自分の寿命です。
自分がいつ死ぬのか?これさえ分かっていれば、こんなに計画しやすいものはないですよね。
人生のゴールが決まっていれば、逆算して計画できますから、そのときまでにやってみたいと思うこと、やらなければならないことを、どんどん計画に組み入れることができます。
しかし、現実はそうではありませんね。
自分がいつ亡くなるのか、いつ病気になるのか、いつ介護状態になるのか、いつ判断能力がなくなってしまうのか、当たり前ですが、全てが未知です。
最近メディアでは、よく老後問題が取り上げられています。
「100年時代」とよく言いますが、これは現実的な話だということを肌で感じています。
私は、このような仕事柄、高齢の方と頻繁にお逢いしますが、昨年末にご縁をいただき、70代の息子様から98歳のお母様の相続対策に関するご依頼をいただきました。
私の中の98歳のイメージでは昔テレビでも人気だった「金さん、銀さん」です。
金さん銀さんもご年齢の割にすごく元気な印象でしたが、現代の98歳は私のイメージ以上です。
自身の足で歩き、夏場でも庭に出て草抜きをされたり、畑仕事をされるようなタフなお母様なのです。
このお母様に限らず、現代の80代、90代の高齢者の方々とお話をしても、やはり現代の方がしっかりとされているように感じてしまいます。
老後2000万円問題
人生100年時代を前提として考えたとき、問題と騒がれているのが、老後生活資金の蓄えが平均2000万円必要だとした金融庁の調査報告書。
この報告書をメディアが報じ、これを見た方は年金だけでは老後に2000万円足りないので、これを自力でためろ!と言われたような印象をもたれた方が多いかもしれませんが、金融庁としては、今あるお金を老後資金のために「ためる」だけではなく「投資・運用」してね。という意図もあったようです。
昔のライフプラン
昔よくあったライフプランは60歳までに預貯金などで準備した老後資金(昔は高金利でしたから、定期預金でも運用になっていました。)と、定年退職した際の退職金、そして老齢年金(仕組み上高所得であればあるほど年金もたくさんもらえますね)といったような準備方法で、万全な状態で老後を迎えるライフプランを組める方が多かったと思います。 現在このようなライフプランを組める人はわずかでしょう。
なぜなら現代は低金利の時代であるため、普通に金融機関に預け入れるだけでは増える見込みがなく、景気が悪い時期に低所得で年金を支払っている方は、老齢年金が少なくなり、そして前述したように人生100年時代であるからです。
現代のライフプラン
60歳までに潤沢な資金を貯めることも低金利で難しい時代に、60歳で退職なんてしたらあと40年も生活資金がいるということになります。
40年もの間、預貯金と少ない年金だけで生活できる方は、よっぽど豊富な預貯金が必要です。これは一般的な考え方ではないですね。
したがって、人生100年時代では、早い時期から積立NISAやIDeCoなどの良い制度を活用して、積立・投資・運用を行い、さらに現役で働く時期を伸ばして「長く稼ぐ」必要もあるわけです。
こういったことも金融庁は言いたかったのでしょう。
正しい情報がうまく周知されていないように感じます。
これからの相続対策
前述したように、人生100年時代を考えたとき、 例えば、平均寿命が伸びた場合に、健康寿命も同じく伸びるのか?という疑問が生じます。
例えば、60歳代で認知症や脳血管疾患などの生活習慣病を患い、その後40年もの長い期間存命するとなった場合のことを考えると恐ろしいですね。
ほか、例えば、100歳の方から相談されることもあるのかもしれません。その際には、子供も80歳近くの年齢になっているはずで、その子供はすでに亡くなっていたりするかもしれませんね。
そうなった場合、その100歳の方の相続人は、代襲相続となり、子供ではなく孫に変わっていることになります。
つまり、当初予定していた相続人(子)ではなく孫が相続人になり、さらに孫が複数人いる場合には、甥姪と叔父叔母との間で遺産分割協議が始まるということも、珍しくなくなるのでしょう。
もしくは、相続人である80歳近くの兄弟が存命していた場合でも、兄弟の1人が認知症を患っていたり、入院中であったり、介護状態であったりすることも想定されます。
その場合は遺産分割協議をするということも難しくなってきます。そもそも、80歳過ぎて遺産分割協議をするというのも違和感さえ感じます。
これからの相続は、前述したような人生100年時代を現実として想定した上で、相続対策が必要となります。
その中でも、やはり遺産分割対策として「遺言書」、生前長い期間にわたって必要な財産管理対策として「民事信託・家族信託®」、自身が判断能力喪失した際の、年金受給、要介護認定、医療行為、介護保険など、
本人に代わって手続きをする人を元気なうちに指定しておく対策として「任意後見」、延命治療に関する宣言「尊厳死宣言」は、必要不可欠な対策であると考えます。
しかしながら、事前対策というのは自身が元気なうちしかできないことです。
老後の生活資金を考えるのと同じようにぜひ相続対策も考えて見て下さいね。
相続コンサルタント
杉村 洋介